お知らせ

News

ホーム

>

お知らせ

ホーム

>

Dr.ナンバの時間 Vol.44 寒い冬、猫の「長いトイレ」にご用心❗

2026/10/25

Dr.ナンバの時間 Vol.44 寒い冬、猫の「長いトイレ」にご用心❗

猫が何度もトイレに行く、オシッコが出にくい……膀胱炎・ストルバイト・尿道閉塞のお話

― 寒い季節、猫ちゃんのトイレをちょっと気にしてみてください ―

執筆・監修:難波 信一 獣医師・獣医学博士
マーブル動物医療センター 院長


この記事の要点

猫ちゃんが何度もトイレに行く、長時間しゃがんでいる、オシッコが少ししか出ない。そんな様子が見られたら、膀胱炎や尿石症、尿道閉塞などの可能性があります。

  • 水分摂取が不足すると尿が濃くなり、ストルバイトなどの結晶や尿石が形成されやすくなることがあります。

  • 猫の排尿トラブルには、猫特発性膀胱炎など、尿石以外の原因もあります。

  • 特にオス猫は尿道が詰まりやすく、尿が出ない状態は命に関わる緊急事態です。

  • オシッコが出にくそうなら、まず動物病院へ。尿が出ない、あるいは数滴しか出ない場合は直ちに受診してください。


寒くなりましたねぇ。猫ちゃん、お水飲んでます?

朝晩、ずいぶん冷え込むようになりました。

猫ちゃんは暖かい場所を見つける天才です。

こたつの中、毛布の上、日当たりの良い窓際。

一度お気に入りの場所を見つけたら、なかなか動きません。

「本日の営業は終了しました」

……ま、普段からあんまり営業していませんけどね(笑)。

さて、そんな猫ちゃん。

最近、お水を飲む量が減っていませんか?

猫によっては寒い季節に飲水量が少なくなることがあります。

実は猫は、もともと少ない水分でも濃い尿をつくれる動物なんです。

ところが、水分が不足すると尿がさらに濃くなり、尿に含まれるミネラル成分が結晶になりやすくなることがあります。

その代表的なものが、ストルバイト結晶です。

小さな結晶が集まって尿石になったり、尿道を詰まらせる物質の一部になったりすることもあります。

ただし、猫のオシッコのトラブルは、尿石だけが原因ではありません。

そして、寒い季節に私が気にしていただきたいのが、猫ちゃんのトイレの様子なんです。


「あれ? 今日はトイレが長いなぁ……」

猫ちゃんがトイレに入る。

しゃがんでいる。

なかなか出てこない。

ようやく出てきたと思ったら、またトイレへ。

「あら、今日はトイレが長いわねぇ」

「便秘なのかしら?」

そんなふうに思うこと、ありませんか?

でも、ちょっと待ってください。

それ、オシッコが出にくくなっているのかもしれません。

猫の膀胱炎や尿石症などでは、次のような症状が見られます。

  • 何度もトイレに行く

  • 長い時間、排尿姿勢をとっている

  • オシッコが少ししか出ない

  • 排尿するときに痛そうに鳴く

  • 血尿が出る

  • トイレ以外の場所でオシッコをする

  • 陰部をしきりに舐める

こうした症状が見られたら、まず動物病院を受診していただきたいのです。

特に、オシッコが出ていない場合は要注意です。


怖いのは「尿道閉塞」。特にオス猫は要注意!

猫ちゃんの排尿トラブルで、私たち獣医師が特に警戒するのが尿道閉塞です。

オス猫はメス猫に比べて尿道が細く長いため、尿石や尿道栓などによって尿道が詰まりやすい構造をしています。

尿道が完全に詰まると、膀胱にたまった尿を排出できなくなります。

その結果、腎臓の働きが障害されたり、血液中のカリウムが危険なほど上昇したりして、命に関わることがあります。

「昨日までは元気だったのに……」

そんなことも起こり得る病気なのです。

猫ちゃんが何度もトイレに行くのに、オシッコが出ない、あるいは数滴しか出ない場合は、直ちに動物病院を受診してください。

夜間なら、救急対応可能な動物病院へ。

「明日の朝まで様子を見よう」は危険です。


猫のオシッコトラブルは、ストルバイトだけが原因ではありません

ここで少しだけ、専門的なお話をしましょう。

猫ちゃんの頻尿や血尿、排尿困難などを引き起こす病気を、まとめて猫下部尿路疾患(FLUTD)と呼びます。

代表的なものには、尿石症、尿道閉塞、細菌性膀胱炎などがあります。

そして、実はよく見られるのが、

猫特発性膀胱炎(Feline Idiopathic Cystitis:FIC)

という病気です。

名前は難しいですが、簡単に言えば、検査をしても明確な原因が特定できない膀胱炎のことです。

ストレスや生活環境なども発症に関係すると考えられています。

例えば、引っ越し、模様替え、同居猫との関係、トイレ環境の変化などです。

猫ちゃんって、自由気ままに生きているようで、意外と繊細なんですよね。

そのくせ、こちらの都合はあまり気にしてくれませんが(笑)。

大切なのは、尿石症も特発性膀胱炎も、似たような症状が出るということです。

飼い主さんが症状だけで原因を判断するのは難しいため、必要に応じて尿検査や超音波検査などを行い、原因を調べます。


お水をたくさん飲ませれば大丈夫?

水分摂取を増やすことは、尿路の健康を守るために大切です。

水分を十分にとることで尿量が増え、尿中の結晶形成に関係する成分を薄める効果が期待できます。

ご家庭では、

  • 水飲み場を複数設置する

  • 常温の水や、少し温かい水を試してみる

  • ウェットフードを取り入れる

  • フードに水を加えてみる

  • トイレを清潔で快適な場所に設置する

といった工夫が役立ちます。

以前のコラムでもご紹介した「ドライフード茶漬け」や「ちゅ〜る水」も、水分摂取を増やす工夫のひとつです。

関連記事:
Dr.ナンバの時間 Vol.11「うちの子、結石防止用のフードを食べているから、結石はできません❗ え?」

ただし、すでにオシッコが出にくくなっている場合は別です。

水を飲ませるだけで膀胱炎や尿道閉塞が治るわけではありません。

まずは診察を受けて、原因を確認することが大切です。


Dr.難波から 「オシッコ、ちゃんと出ていますか?」

「先生、うちの猫、何度もトイレに行くんです」

そんなお話を伺ったとき、私がまず確認したいのは、

「で、オシッコはちゃんと出ていますか?」

ということです。

出ているのか。

少ししか出ていないのか。

まったく出ていないのか。

これによって緊急性が大きく変わります。

猫ちゃんは「オシッコが出なくて困ってます!」とは言ってくれません。

だからこそ、飼い主さんの観察がとても大切なんです。

そして、私はこう思っています。

「何もなければ、それでいいじゃありませんか」

診察をして、重大な病気がなければ、それは嬉しいことです。

「もう少し様子を見てから……」と考えているうちに、病状が悪化してしまう方が、ずっと残念です。

特に尿道閉塞は、一刻を争うことがあります。

オシッコが出にくそうだな、と感じたら、まず診せてください。

それが今回、私がいちばんお伝えしたいことです。


よくある質問(Q&A)

Q1. 猫が何度もトイレに行くのは、膀胱炎でしょうか?

膀胱炎の可能性がありますが、尿石症や尿道閉塞などでも同じような症状が見られます。特に尿が出にくい場合は、早めに動物病院を受診してください。

Q2. 猫のオシッコが出ないとき、何時間まで様子を見ても大丈夫ですか?

安全に様子を見られる時間はありません。何度も排尿姿勢をとっているのに尿が出ない場合は、緊急性の高い尿道閉塞が疑われます。直ちに動物病院を受診してください。

Q3. 猫特発性膀胱炎はストレスで起こるのですか?

ストレスや生活環境などが関係すると考えられていますが、原因はひとつではありません。尿石や感染症などを除外して診断する必要があり、環境改善などを含めた治療が重要です。

Q4. ストルバイト結晶が見つかったら、尿石症なのでしょうか?

必ずしもそうではありません。尿中に結晶が見つかっても、尿石が存在するとは限りません。症状や尿検査、画像検査などを組み合わせて判断します。

Q5. 猫のオシッコの病気は、水をたくさん飲ませれば予防できますか?

十分な水分摂取は尿路の健康維持に役立ちますが、それだけであらゆる膀胱炎や尿石症を予防できるわけではありません。食事や生活環境も重要です。排尿に異常が見られる場合には、まず診察を受けてください。


まとめ 長いトイレには理由があるかもしれません

寒くなってきたら、猫ちゃんのお水のお皿とトイレの様子を、いつもよりちょっと気にかけてあげてください。

何度もトイレに行く。

長い時間しゃがんでいる。

オシッコが少ししか出ない。

そんな変化は、体からの大切なサインかもしれません。

藤沢市のマーブル動物医療センターでは、猫の膀胱炎、尿石症、血尿、排尿困難などの診察を行っています。

「長いトイレ」に気づいたら、まずは動物病院へ。

猫ちゃんが毎日、気持ちよくオシッコできるように。

私たちもお手伝いします(^^)。

※尿が出ない場合は緊急事態です。診療時間外には、夜間救急動物病院を受診してください。


参考文献

  1. Taylor S, et al. 2025 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of lower urinary tract diseases in cats. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2025;27(2). doi:10.1177/1098612X241309176.


執筆・監修:難波 信一
獣医師・獣医学博士
マーブル動物医療センター 院長

初回公開日:2026年10月25日

keyboard_arrow_left

お知らせ・ブログ一覧へ