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Dr.ナンバの時間 Vol.45 「口内炎と言われたけれど、なかなか治らない猫ちゃんはいませんか?」

2026/11/1

Dr.ナンバの時間 Vol.45 「口内炎と言われたけれど、なかなか治らない猫ちゃんはいませんか?」

猫の慢性口内炎と、口や顔に強い痛みが起こるFOPSのお話

― その痛み、本当に口内炎だけが原因でしょうか? ―

執筆・監修:難波 信一 獣医師・獣医学博士
マーブル動物医療センター 院長


この記事の要点

猫ちゃんの口内炎には、歯ぐきだけでなく、口の奥まで強い炎症が広がるものがあります。治療してもなかなか改善しない場合は、痛みの原因を改めて調べることが大切です。

  • 口の奥、特に口蓋舌弓部に強い炎症があると、食べたいのに食べられないことがあります。

  • 猫カリシウイルス(FCV)は、猫の口の炎症に関係するウイルスの一つです。

  • 猫の口の痛みには、歯の病気や口内炎のほか、神経が関係する痛みもあります。

  • FOPS(猫の口腔顔面痛症候群)では、突然痛がったり、前足で口元を激しくこすったりすることがあります。

  • 長く治療しても改善しない場合は、これまでの治療内容や症状の動画を持参して、もう一度相談してみましょう。


「先生、うちの猫、ずっと口内炎なんです……」

「口内炎と言われて、ずっとお薬を飲んでいる」

「治ったと思ったら、また痛がる」

「食べたい気持ちはあるのに、食べられない」

そんな猫ちゃんはいませんか?

飼い主さんとしては、何とかしてあげたいですよね。

人間だって、小さな口内炎が一つできただけで、食事のたびに「痛っ!」となります。

それが毎日続いたら……。

考えただけで、食欲がなくなりそうです。

でも、猫ちゃんの口の痛みは、私たちが想像するよりも複雑なことがあります。


口内炎にも、いろいろあります

猫ちゃんの口内炎には、歯ぐきが赤くなる程度のものから、口の奥まで強い炎症が広がるものまであります。

特に厄介なのが、口蓋舌弓部(こうがいぜっきゅうぶ)を含む、喉の手前の左右の部分に起こる強い炎症です。

ちょっと難しい名前ですが、簡単に言えば「口のずっと奥」のこと。

この部分が真っ赤に腫れたり、ただれたりすると、食べること自体が苦痛になることがあります。

食べたい。でも、痛い。

人間なら「今日はお粥にしようかな」と考えるところですが、猫ちゃんはそうもいきません。

こうした口の奥の炎症は、治療しても再発したり、なかなか改善しなかったりすることがあります。

ただし、すべての猫ちゃんが同じ原因で痛がっているわけではありません。


猫カリシウイルスって、口内炎と関係があるの?

猫の口の炎症に関係するものの一つに、**猫カリシウイルス(FCV)**があります。

猫カリシウイルスは、いわゆる「猫風邪」の原因となるウイルスの一つです。

くしゃみや鼻水だけでなく、舌や口の中に潰瘍(粘膜がただれた状態)を作ることもあります。

また、長く続く重い口内炎の猫ちゃんでは、このウイルスが検出されることも少なくありません。

ただし、ここが大切です。

猫カリシウイルスが見つかったからといって、それだけが口内炎の原因とは限りません。

慢性口内炎には、ウイルスだけでなく、歯の周囲の病気や体の免疫反応など、さまざまな要因が関係していると考えられています。

つまり、ウイルスがいるかどうかだけでなく、口の中で何が起きているのかを調べることが重要なのです。


口の中だけが原因とは限らない?

実は、猫ちゃんには、口や顔の感覚を伝える神経が関係して、強い痛みが生じると考えられている病気もあります。

「猫の口腔顔面痛症候群(FOPS)」という病気です。

名前は難しいですが、覚えていただく必要はありません(笑)。

この病気では、食事中や口を動かしたときに突然痛がったり、前足で口元を激しくこすったりすることがあります。

口内炎や歯の病気と一緒に見られる場合もあります。

ただし、FOPSと慢性口内炎は同じ病気ではありません。

つまり、口内炎を治療しても痛みが続くときには、別の原因も考える必要があるのです。


「あれ? うちの猫も……」こんな様子はありませんか?

  • ごはんを食べようとして、突然やめてしまう

  • 食事中に「ギャッ!」と鳴くことがある

  • 口をクチャクチャ、モグモグさせる

  • 前足で口元を何度もこする

  • 口を触られるのを極端に嫌がる

  • よだれが増えたり、口臭が強くなったりする

  • 口内炎のお薬を使っても、痛みが繰り返される

もちろん、こうした症状だけで病気が決まるわけではありません。

歯の病気、口内炎、神経が関係する痛みなど、いくつかの可能性を考える必要があります。


Dr.難波から 「その痛み、諦めないでください」

「もう何年も口内炎だから……」

「いろいろ治療したけれど、良くならないから……」

そんな猫ちゃんの中にも、痛みの原因を改めて調べることで、治療の方向性が見えてくる場合があります。

特に、口の奥に強い炎症がある猫ちゃんでは、炎症の広がりや歯の状態、これまでの治療経過などを丁寧に確認することが大切です。

必要に応じて、猫カリシウイルスの検査などを検討する場合もあります。

特別な治療が必ず必要というわけではありません。

まずは、今どこが痛いのか、何が原因として考えられるのかを、一緒に確認することから始めましょう。

そして、もう一つ。

猫ちゃんが口を気にしている様子を、できれば動画に撮っておいてください。

診察室では、普段の症状が見られないこともあります。

そんなとき、おうちで撮影した動画が、診断の大切な手がかりになることがあります。

もちろん、撮影するために無理に口を開けたり、痛がる場所を触ったりする必要はありません。


よくある質問(Q&A)

Q1. 猫の口内炎は治らない病気ですか?

そんなことはありません。原因や炎症の程度によって、改善が期待できる猫ちゃんもいます。歯を抜く治療が有効な場合もありますが、治療後も症状が続く猫ちゃんには、さらに詳しい評価が必要です。

Q2. 口の奥が真っ赤になっているのは、なぜですか?

口蓋舌弓部を含む口の奥に、強い炎症が起きている可能性があります。慢性口内炎では、この部分に炎症が広がることがあり、強い痛みを伴う場合があります。

Q3. 猫カリシウイルスが陽性なら、口内炎の原因はウイルスですか?

必ずしもそうではありません。猫カリシウイルスは口内炎に関係することがありますが、感染していても症状のない猫ちゃんがいます。検査結果だけでなく、口の中の状態や治療経過などを合わせて判断します。

Q4. FOPSとはどんな病気ですか?

口や顔に強い痛みが突然起こる病気で、神経の働きが関係していると考えられています。口をクチャクチャ動かしたり、前足で顔を激しくこすったりすることがあります。ただし、似た症状を示す歯や口の病気もあるため、診察による確認が必要です。

Q5. 以前から口内炎の治療をしていますが、相談できますか?

もちろんです。これまでのお薬や治療内容がわかる資料があれば、ぜひお持ちください。症状が出ているときの動画も、とても参考になります。

Q6. ごはんを食べられない場合、しばらく様子を見ても大丈夫ですか?

猫ちゃんが食べられない状態を長く放置することはおすすめできません。痛みだけでなく、脱水や栄養不足につながることもあります。食べられない場合は、早めに動物病院を受診してください。


まとめ 「食べたいのに食べられない」には理由があります

猫ちゃんの口内炎は、必ずしも簡単に治る病気ではありません。

でも、なかなか改善しないからといって、すべてを諦める必要もありません。

口の奥の炎症が強いのか。

猫カリシウイルスなどが関係しているのか。

歯の病気が関係しているのか。

それとも、神経が関係する痛みが隠れているのか。

原因をもう一度考えることで、次の一歩が見えてくるかもしれません。

藤沢市のマーブル動物医療センターでは、なかなか改善しない猫ちゃんの口内炎や、原因のわかりにくい口の痛みについても、ご相談をお受けしています。

食べることは、猫ちゃんにとって大きな楽しみの一つ。

その楽しみを少しでも取り戻せるように。

私たちもお手伝いします(^^)。


参考文献

  1. Soltero-Rivera M, Goldschmidt S, Arzi B. Feline chronic gingivostomatitis: current concepts in clinical management. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2023;25(8):1098612X231186834. https://doi.org/10.1177/1098612X231186834

  2. Rusbridge C, Heath S, Gunn-Moore DA, et al. Feline orofacial pain syndrome (FOPS): a retrospective study of 113 cases. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2010;12(6):498–508. https://doi.org/10.1016/j.jfms.2010.03.005

  3. 2025 FelineVMA Feline Oral Health and Dental Care Guidelines. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2025.


執筆・監修:難波 信一
獣医師・獣医学博士
マーブル動物医療センター 院長

初回公開日:2026年11月1日

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